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東海近辺のライフログ。
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まずはイラン映画から。


『ペルシャ猫を誰も知らない』

内容的にはドキュメンタリーに近い。国家に規制されて自由に音楽活動できない人たちが、なんとかして音楽活動を続け、亡命を試みる様を描いている。

主人公は自分の音楽を伝えるために、メンバー探しをする中でイランのいろいろなジャンルのミュージシャンに会いに行く。そういう設定を通して、映画の中ではイラン音楽事情やアーティストが紹介されている。

映画は鋭利な刀物の上を綱渡りするようなイラン人の危険な日常が、エネルギッシュに描かれているのでなかなか興味深かったが、物語が残酷すぎて暗いのが印象に残った。それは実際のイランの国内事情に合わせてのものだろう。

ほかに印象に残ったのは音楽の歌詞が魅力的だったこと。政府に規制された中での活動を強いられているからか、みんな直接的な歌詞ではなく間接的な比喩表現でメッセージを伝えており、それがポエティックな芸術性を高めていた。浮世絵とかもそうだけど、芸術は不自由で制約のある状況の中でこそ進化し、研ぎ澄まされていくのだということがよくわかる内容になっていた。

映画のラストはあまりにも切ない、唐突な終わり方だった。観終わったあとは「救いがねえなあ」という独り言が漏れたんだが、それは映画の主人公が「一瞥もされない唐突な死」を迎えたから。

どんなに希望を持っていても、才能に溢れていても、お金がないわけではなくても、ある日突然虫けらが踏みつぶされて簡単に生命がけし飛ぶように、人の命と夢がはかなく消えて行く。その人間らしい死さえも望めないのが、イランの実情なんだろう。

ペルシャ猫はイランの地では、歴史的に神として崇められ、猫を殺した者は死刑にされたというほど、高貴な生き物として扱われていたという。タイトルがこうなっているのも、現在のイランの人間とペルシャ猫の歴史を皮肉ったものなんだろうね。

名もない才能ある人間の思いを代弁するために、涙が枯れても前に進んで行こうとする人たちの手で作られた映画だということはよくわかった。

こういうのを見ると、マイナー映画を見るのをやめられなくなるね。
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